ダイバーシティ時代のコミュニケーション術


「ダイバーシティ推進」に取り組む企業が増えています。多様な人たちと、気持ちよく働くために、スムーズなコミュニケーションがとれたらいいですよね!取り組みが進む企業の人たちに、その心がけを聞きました。職場で生かせるコミュニケーション術も紹介しますよ。

苦手だからと避けるのはもったいない。これまでと少し視点を変えてみると、世界はぐんと広がりますよ。

世代間でも気遣いが必要な「違い」への対応。多様な人たちと働くようになったら、一体どうなるの?知っておきたいのが「アンコンシャス・バイアス」です。

1.ダイバーシティ時代で必要な思考力

「経済成長が当たり前と信じられていたバブル以前の日本では、雇用の面で均質性が重んじられてきました。しかし、バブル崩壊後は一気にグローバル化が進み、産業を取り巻く環境は、10年未満のスパンで変化するようになりました。同じ組織のなかでも、それぞれの体験によって価値観が違うのは当たり前」とは、名古屋工業大学ダイバーシティ推進センターの加野泉さん。
グローバル化が進む中で、1990年代前半から注目されはじめたのが、ダイバーシティマネージメントという視点です。「人口減を背景に、外国人の雇用拡大、女性活躍が進められる社会では、組織づくりの要となります。バックグラウンドの多彩な人たちが協働し、一人ひとりが力を発揮して、組織の向上を目指します。かつては、あ・うんで通じたことも、さまざまな属性、価値観、バックグラウンドの人たちで理解し合うためには、思考力とコミュニケーション能力を高める必要が出てきます」

2.だれでも偏見、思い込みがある!?

 私たちが情報を受け取るとき、そのうちの99.9%は無意識に処理されています。自分の言動や振る舞いに無意識のうちに思い込みや先入観が影響していることも多いのです。
加野さんは、だれもが持つ「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」が、職場においても、スムーズなコミュニケーションの妨げになる場合があると話します。
「『ゆとりはマイペースでいいね』など、自分のバイアスがかかったささいな発言が、悪気はなくても相手を傷つけていることがあります。ただし、バイアスがすべて悪いわけではありません。
相手が同じ出身地や学校の同窓生だと分かると、急にいい人に見えることってありますよね。共通項を見つけて、途端に親近感がわいて距離が縮まる、これもバイアスの効果です。自分自身にも、プラスにもマイナスにも働くバイアスがあることを自覚し、コミュニケーションがうまく行かないときには、自分自身のバイアスを意識化して見直すことが大切です」
バイアスが引き起こす3つの壁は下図の通り。多様な人たちと接する中では、「びっくりしない、恐れないこと。自分もその多様な中の一人です。また、人は誰しもバイアスを持っていることを知っておくと、相互に行き過ぎた言動を抑えるよう配慮できます」と加野さん。
「ダイバーシティが進むと、“個人の価値”が尊重されます。一方で、それは一人ひとりが組織に貢献できているかが問われ、一人ひとりの能力を最大限に生かすことが期待されるということです。いきいきと活躍できるよう、柔軟に力をつけ続け、自分の価値を磨きつづけてほしいですね」とアドバイスをくれました。

無意識のバイアスが引き起こす3つの壁

ステレオタイプ・スレット
(Stereotype Threat)

物事を分類して、先入観で評価すること。自分自身にも影響し、選択の幅を狭めることもあります。

例…女性が家事育児をするべきだといった役割意識

身内意識とよそ者意識

自分と同じ集団に属する人は安心して信用し、逆に、知らない集団の人々には違和感を持ち警戒する意識。

例…同窓会のつながりや学閥意識

マイクロアグレッション
(Micro Aggression)

ささいな侮辱、ぞんざいで横柄な態度のこと。取るに足らないと思われるようなささいな侮辱が積み重なって、差別、排除が助長されていきます。

例…たびたび相手の話をさえぎって口を挟む、名前を間違えたまま呼び続ける

出典:「無意識のバイアス - Unconscious Bias - を知っていますか?」男女共同参画学協会連絡会著(2019)
https://www.djrenrakukai.org/doc_pdf/2019/UnconsciousBias_leaflet.pdf

大橋運輸(瀬戸市)では、性別・国籍・年齢・障がい・ライフスタイルなどの感性・価値観の違いを認め合い、個をいかし、チームで助け合う、いきいきとした職場づくりが進んでいます。社員3人に、気持ちよく働くための心がけを聞きました。

平成28年度には運輸業の中小企業として全国で初めて、「新・ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業省)に選定。左から、経営戦略室室長・中西くみさん、採用担当・岡田桃歩(とうあ)さん、海外事業部リーダー・E.アンドロさん

1.始まりは8年前の女性活躍

中西 私が入社した8年前は、時短の女性は少数派。「申し訳ない」という意識がありましたが、今では、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が増え、「それぞれの事情がある」ことを理解し、当たり前になっています。
アンドロ 外国人は私が初めての採用でもうすぐ5年です。現在は5人に増えました。社長やチームメイトが丁寧に悩みを聞いてくれ、助けになりました。同じ悩みを持つ外国人には、「差別なく扱ってくれる環境で経験することは、今が大変でも、あとから必要なことだと分かるよ」とアドバイスしています。
岡田 私は人事採用を担当しています。採用の際は、障がいのある人、外国人といった区分や、特別視はしていません。一人ひとりが持つ特性はあろうとも、一個人として面接をして、この環境で何ができるのかを考えています。こうだからしかたないといった甘やかしはよくないと思っていますが、個々人のバックグラウンドの線引きは難しいので、課題一つひとつと向き合うように意識しています。

2.どうしたら伝わるかを考える

岡田 私を含め、社内には英語が得意ではない者もいます。ある時、通訳を通さずに、海外メンバーにどうしたら伝わるかを考えていたところ、社内から「AI翻訳機ポケトークが使える!」「アンドロさんから一言フレーズを学ぶ機会をつくろう」といった、いろいろなアイデアが生まれました。うまく話せないからしゃべらないではなく、伝えたいからやり方を考える。外に目を向けて、みんなで立ち向かって何とかしようという姿勢が大事だと考えています。
中西 発達障害の方の入社が決まったとき。個人差があるものなので、「まず周りが理解しよう!」と、専門家を招いて勉強会をしました。知らないのが一番よくなくて、自分のイメージが勝手な判断につながったり。学ぶ機会を設けて、お互いに少しずつでも知っていけたら、前に進めると思います。私たちは障がい者やLGBTなど、特定の人を狙って採用しているわけではなくて、前向きに動ける人に、「安心して活躍できる場があるよ」と扉を開いていたら、いろいろな人がいたという感じ。結果、障がい者雇用率は9.4%です。

3.オープンマインドでいよう!

アンドロ 人は一人では生きていけないから、すべてに対してオープンであることが大事。自分のことを一方的に話しているだけでは、知っていることは増えません。相手の話を聞くと、気づきがあり、学びが増えます。強み、弱みを分かち合い、教え合って助け合える。ウィンウィンの関係が理想です。人を助けることは自分も豊かになりますね。
中西 私は母親から、自分の物差しで人を測るなと言われて育ちました。それぞれに抱えているものも違います。相手は自分と同じじゃないことを前提に、大事なことは言葉にしていきたいですね。
岡田 私はこれまでに、自分の持つ特性によって辛い思いや苦労した経験はあまりなかったように思います。それは、人に恵まれ、職場仲間、友人など、受け入れてくれた人たちがいたから。とても感謝しており、その人たちと同じように私も周りを受け入れようと思っているので、受け入れないという選択肢はありません。“知らない”“分からない”は、苦手だな、怖いなという先入観を持ってしまうのだと思います。知ろうとして入り込むと、印象と違うことも多いですよ。

アートセラピスト、心理カウンセラーの佐藤高子さんに、今からできるコミュニケーション術を教えてもらいました。本当のキモチを、相手に丁寧に伝えてみることから!

1.負の感情に襲われたら、呼吸に意識を

「他人とは共通点はあるけれど、違って当たり前。相手との違いを知り、興味関心を持つことが、コミュニケーションの第一歩。相手に対する否定感は、世間が狭くなり、知識も狭まります。相手を認めることで、自分の能力もあがるのですよ」と佐藤さん。
人に対する「イラっ」とした感情が湧いたら、その感情に支配されないようにその場から離れて「深呼吸」。次のステップは、無理やり分かろうとするのではなく、相手をじっくり観察して、冷静になること。負の感情に支配されると、思考がストップしてしまいます。
自分の考えは、相手の目を見て、「私は○○と思う」とI(アイ)メッセージで表現し、次は話を聞くよという姿勢を伝えましょう。
「だれもがイヤな体験はしたくありませんが、失敗を恐れずに。自分の成長のために、飛び込むくらいのキモチだと、自分の幅が広がり、心がラクになりますよ」

2.「本心を正しく伝える」をクセに!

佐藤さんは過去の経験から、「本心」の伝え方を意識するようになりました。
「携帯電話が普及していない30年前のこと。友達と待ち合わせをして、約束の時間に1時間経っても現れず、ようやく現れた友だちに『何してたの、遅いよ!』と、キレた発言をし、険悪ムードに…」
待ち合わせ場所を間違えた? もしかして日にちが違う? 何で来ないの、こんなに私を待たせて…。まとまりのない気持ちが、不安感、焦り、怒りに変化して、つい言ってしまったのは「負の感情のことば」。本心を伝えられなかったケースです。
「その時の感情をそのまま表現し、誤解を自分からつくってしまうと、気づかないうちに自分自身をも傷つけることになります。人は内観をしていくと、“本心”が見えてきます。素直で前向きな“本心”を伝えるよう意識すると、いろいろなストレスが消えていきます。本心を、正しく伝える“心のクセ”をつくりましょう!」

シティ読者発

会社で実践中!
コミュニケーションを円滑にする取り組み

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  • LINE WORKSを取り入れ、ささいなことも連絡するようにしています。(47歳/商社)
  • フリーアドレスのため、自分の席が固定されていないので、毎日周りにいる人が変わります。(29歳/金融)
  • 1日1回、必ず同じセクションのみんなと短時間でも休憩し、お茶タイムを取っています。(38歳/サービス)
  • コミュニケーション費用補助、コミュニケーション活性ミーティングがあります。(31歳/サービス)
  • 肩書きにかかわらず、「さん」付けで呼んでいます。(48歳/メーカー)


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