“真ん中コミュニケーション”術


左から読者の英賀千恵美さん、佐藤亜紀さん、小山次子さん 撮影協力/ LIFULL HUB

働く女性の立場で一番多いのは、トップでも新人でもない入社数年~十数年の
「中間層」。いわゆる中間管理職でなくとも、その場のメンバー次第で上中下のどの
立場にもなることや、板挟みの環境に悩みを抱える人は多いはず。今回は“真ん中
ポジション”で楽しく働くためのコミュニケーションのヒントを紹介します。

春の人事異動などで人間関係が変わった人も。立場の変化に惑わされず楽しく円滑に働きたいですよね。
先輩・上司、後輩・部下…さまざまな立場の相手と関わる仕事の場では、上と下の言っていることが違うなど、苦労がつきもの。立場が変わらない家庭と違い、オフィスでは、年齢に関係なく誰もが中間ポジションになり得ます。
産業カウンセラーの宮本実果さんによると、「中間ポジションは“つなぎ目”で調整力が必要。異なる意見に挟まれたら、相手が言ったこと(事実)と、それを受けて自分がどう思うか(感情)を分けるのが大切」とか。その2つを混同すると、感情的な対応になりやすく、トラブルになることも。
そうならないためには「自分の心のクセを把握することが大切」。自分の価値観や、自分にとってのストレスの原因を知ることが、板挟みの中でも柔軟なコミュニケーションをとる第一歩に。「女性は人生の選択肢がたくさんあり、環境の変化も多いもの。“真ん中力”を身に付けられれば、より客観的に考えるクセがつき、強くなれます」と宮本さん。
融通を利かせながらもブレない“真ん中力”を基に、上司や部下と意思疎通できれば、より自分が働きやすくなりそう。組織で働く以上、意識したいですね。

職場で間に挟まれて苦労・・・。
読者が中間ジレンマを
感じたエピソードを紹介します。
※アンケートは、2月21日~3月6日
シティリビングWebで実施、有効回答数995

  • 自分より年上で社会経験豊富な人が後輩に。何かと自信があり、メモを取らないので約束を守れず…。上司ではなく、先輩の私が指導するべきと言われ、「使いやすそうなメモ帳を見つけたので、おそろいで使いましょう!」と、メモ帳を渡して乗り切りました。(33歳・メーカー)
  • 先輩から厳しく育てられました。でも後輩には厳しくすると「自分ほめられて伸びるタイプです」と言われて困っています。(47歳・不動産)
  • 上司の厳しめの指導に後輩がおびえてしまい、上司のいないところでの精神的フォローが大変!(31歳・保険)
  • 上司からはスパルタ教育を受けました。言われた側の気持ちが分かるので、部下には優しく言おうとワンクッションおいてしまい、結果相手に伝わらず・・・。(31歳・サービス)
  • 先輩と後輩がそれぞれ互いの悪口を言ってきて困りました。いつの間にか仲直りして、悪口を言っているのが私という話に。どっちの話も聞いていただけなのに!(42歳・保険)
  • 上司から後輩にいろいろ教えたり、注意をするように言われていますが、後輩からは、「なぜあなたが、偉そうに」という視線を感じて言いにくい。(37歳・サービス)
  • 自分の正面の席の2人が仲が悪く、言い合いになることも。口を挟むとますます悪化し、職場の空気がお通夜のようです。(25歳・メーカー)
  • ランチを女性全員で一緒に食べています。全員が会話についていける話をしないといけないので毎日苦労しています。(28歳・商社)
  • 上司は抽象的な指示をして自分の思い通りにならなければ、怒るだけ。それなのに後輩からは「マニュアルをください」と言われ困っています。(39歳・IT)

「組織の輪を乱したくない」「円滑に業務を進めたい」と思うからこそ、
悩む中間ポジション。読者の悩みを基に状況や立場が変わっても動じない
コミュニケーション術を、産業カウンセラーの宮本実果さんに聞きました。

教えてくれたのは
宮本実果さん
教産業カウンセラー/「MICA COCORO」代表。10年間の会社員時代経て2007年、パーソナルブランディングをメインとした「MICA COCORO」を開業。これまでのべ6500件の個人セッションを実施

「事実ファースト」で意見を受け止め言葉に出して伝えることが大事

異なる立場の相手から、それぞれの意見を聞かされたときは、「事実」と「自分が思ったこと」をきっちりと分けて受け取ることが重要です。「先輩はこう考えている」「後輩はこう思った」をまず事実として受け止める。自分がその意見(事実)についてどう考え、どう行動していくかはその次に考えてください。トラブルが起きるのはこの順番が逆になっているから。事実が先、という順番が一番のポイントです。
相手の気持ちを受け止めたと、言葉で明確に伝えることも大事。そうすると、相手は「自分の気持ちを聞いてもらえた」と感じ、話をしやすくなります。心理学ではこれを「共感的理解」といい、「あなたはそう感じたんですね」がグッドワード。「私もそう思います」と同意することが共感と思っている人が多いですが、それは同情や友情。共感ではないので混同しないようにしましょう。

気持ちの可視化で自分の価値観を把握して

上から無茶を言われたり、後輩に注意をするとき「私が言ってもどうせ変わらない」と、モヤモヤを抱えたままいるのは強いストレスになります。そんなとき有効なのは、その時の状況や自分の気持ちを書いて可視化すること。人に話して吐き出す人が多いですが、大事なのは発散させて終わるのではなく、可視化して状況と気持ちを整理すること。さらには「何が自分の価値観にふれるのか」という“思考のクセ”を知ることです。自分にとって「嫌なこと」や考え方のパターンが分かれば、次の対処法を冷静に考えられるようになります。
揺れ動く中間ポジションの人は、まず書くことで「自分の状況を一番知っているのは私」という状態にしましょう。そこから価値観を整理し、軸が持てると、誰に対しても柔軟なコミュニケーションができるようになります。また、どちらかの人とだけのやり取りで完結させないことも大事。自分の行動の目的や考え方を双方に伝えることで自分も動きやすくなり、スムーズに業務を進められるようになるでしょう。

板挟みの状況に悩む20代・30代・40代の読者3人が、
“真ん中女子”のコミュニケーションについて話し合いました。

英賀千恵美さん
(25歳・行政)

先輩に質問しずらい環境の中、年上の後輩へ業務を引き継ぐ対応に悩み中

佐藤亜紀さん
(35歳・IT)

自身のスキルアップに伴い任される仕事が増加。“言えない上司”と“言い返す後輩”に挟まれ、トラブルの矢面に

小山次子さん
(42歳・メーカー)

後輩に頼られてフォローすると、上司から「それでは後輩が育たない」と注意され困惑することも

  • 佐藤さん 今、注意できない上司と、間違いを指摘しても素直に聞かない後輩に挟まれていて。上司に訴えても謝られるだけで注意をしてくれないから、後輩のミスがあると結局私が矢面に立つことに。肩書きがないのでズバっと言えず、遠まわしな気持ち悪い表現になっちゃうのも悩み。変に感情を出さないで、さらっと言える訓練をしたいな。
  • 小山さん 私は仕事では「無」でいられるよう、プライベートと“チャンネル”を切り換える練習をしてる。後輩に厳しく注意する同僚が多くて、下の子たちから頼られちゃう。それを上司からは「君がフォローするから育たない」と叱られる状況。ただ、自分もそうだったけど20代のときって、ある意味無敵ですぐに伝わらないと思う。今は我慢の時期と思ってやり過ごしてるよ。
  • 英賀さん私も無になりたいことがあります。後輩に私より年上で人生経験を積んでいる人がいて、その人にどこまで丁寧に教えたらいいのかが悩み。「この子おせっかい」と思われたくない。上の人には聞きにくい環境で、自分がどんな立ち位置で接すればいいか…。
  • 宮本さんの言う「書いて気持ちを可視化するといい」のはその通りかも。何かがあったとき、直属の上司に向けて長いメールを打つことがあるけど、読み返すと冷静になって結局送らないことも。書くだけ書いて送らないって、結構周りでしている人も多くて、目先の感情で突っ走らずに済むよね。
  • 私も感情に任せて書くことがありますが、書いて少し時間を空けてみると「自分の考え方もよくないかも」と思ったりしますね。
  • 私はモヤモヤしたとき、頭の中で何が原因で、自分はどう思って、その気持ちがどこから発生したのか「ロジックツリー」を作って考えたりもしてるよ。それでも以前は気持ちにしこりが残っていたけど、40代になったら、理由が分かって少し解消できることが増えた。
  • 今までは「適応力」ってどこにいても周りに合わせることだと思っていたけれど、自分を知って立ち位置を見極めたり、自分の中で対処法を持って、どんな立場でもブレずにいられる力のことかもしれないですね。
  • まずは自分の強み・弱みを知ることからだね。
  • 「そう感じたんですね」って伝えるだけでも違うって知らなかったな。後輩は認められたい気持ちがあると思うから、まずはそう言ってみようかな。

チンパンジーのコミュニケーションの秘けつは、まずあいさつ。順位が下の立場から、上の立場にしっかりとあいさつをすることが、群れの中でうまくやっていくコツだとか。
群れの“しきたり”を守ることで穏便に暮らすチンパンジーは、その中で自分の“立ち位置”やキャラクターを把握。特にメスは、基本的に長く群れにいる方が立場が強いものの、明確なヒエラルキーはなく、発情期などで上下が変わることもあるため、冷静に群れの力関係を見ているといいます。
 
ポジションが流動的だからこそ冷静な“立ち位置”の把握と積極的なあいさつが大事なのは、人間も同じかも。 教えてくれたのは多摩動物公園 大賀幹夫さん、田口陽介さん(チンパンジー飼育担当)

意見は感情や先入観と切り離し
情報収集として聞く

仕事場でのコミュニケーションは、多くの場合「チーム(組織)のプロジェクト(目的)をスムーズに進める」ために行うもの。好き・嫌いの感情や「この人いつもこう」という先入観は捨て、まずは今言われている意見を受け入れてみましょう。どちらの意見も聞けるからこそ、その後の調整ができるなどのメリットも。意見は「情報収集」と考え、“真ん中”の立場を上手に使って。

自分を客観視して
「対応力」を身につける

言ってしまった言葉は取り消せないもの。モヤモヤすることがあったときは、下書きとしてメールで書いてみるのも手。言い回しを考えたり、読み返すうちに冷静になれることも。読者座談会の3人はなんと全員が無意識に実践していました。また、書くことは自分を知る手がかりにも。仕事の目的や自分の考え方を整理し、“軸”を持つことで板挟みでもブレずに対応できる力を身につけて。

仕事もプライベートも
真ん中力を切り札に

なぜ今、真ん中力が必要か? それは、女性は結婚や出産などで生活が変わる可能性があり、人生100年時代はさらに多様な人生の選択肢が広がることで、さまざまな立場に置かれるから。真ん中力を身につければ、仕事でもプライベートでも、ライフステージの変化に柔軟に対応していくときの切り札になるはず!


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