「大人計画」主宰・松尾スズキさんインタビュー


開館30周年のイムズで、4月21日(日)まで大人計画の活動30周年のスペシャルイベント「30祭(SANJUSSAI) 凱旋 大人計画大博覧会 in 福岡」が大好評開催中。イベントと30周年を迎えての思いを聞きました。

―福岡で開催することへの想い
 子どもの頃から青春時代まで過ごした福岡は、今の自分を形成するのにすごく大事な時間だったと思うので、こうやって帰ってきて30年の軌跡を見ていただけるのは嬉しいことだなと思っています。
東京では25~26歳の頃からずっと、わりと精力的にやってきた方だと思うのですが、九州に(公演で)来るのは、35~36歳以降の話で、それも本当にたまにしかない。僕が若い頃どんなことをやってきたかなんて、ほとんどみなさんご存じないと思うんです。今の自分に至るプロセスを見ていただくチャンスはなかなかないので、どういう道をたどって松尾はココにいるのか、大人計画はどんな集団なのかが、順を追って展示を見ていくことで分かるような気がします。ものすごく、くだらないことをいっぱいやってきています。こんなくだらないことをやっていても生きて行けるのだと、希望を持っていただけるのもいいことだと思いますし、福岡で生まれた男の1つの軌跡を1日で見られる機会もなかなかないと思いますので、ぜひともみなさん来ていただきたいな、と。

―注目してほしい点
僕だけでなく劇団員も、みなさんが見ているのは、恐らく中年を過ぎてからだと思うんですね。その人たちの若い頃の写真がいっぱいありますので、中年の形で生まれてきた訳じゃないということをぜひ分かっていただきたい。
見れば分かると思いますが、若い頃はすごくお金がない感じなので。それを見て、溜飲を下げてもらえればと思います。面白がっていただけたら嬉しいです。それに舞台写真はなかなか触れる機会がないと思いますし、しかもすごくいい状態で展示しています。うちのスタッフがすごく頑張ったので、見てあげてほしいなと思います。

―30年を振り返って、印象に残っていることは
ずいぶん昔ですが、宮藤官九郎が僕に、「今年からバイト辞めます」って言ってきたときかな。嬉しかったですね。それまで、劇団だけで食べていけていたのが僕一人だったので、やっと出たと思って、「よくやったな!」と。それから、劇団員がバイトを辞めていくたびに、いいぞいいぞと思っています。いくらウケていても、劇団で食べられてなかったら、30年続けられませんよね。そこは重要なポイントだと思います。

―当初は全然ウケなかったと言われていたが、今では劇団から次々と脚光を浴びる人が出ている。その変化の理由は何だと思いますか
僕らが成長したという部分と、世間が僕らに慣れたという部分があると思います。演劇ではかなり前からウケているんですけど、マスメディアに乗っかって大人計画という特殊な集団がいるということを、地方の方々にも知っていただくところまでは、結構時間がかかったな、と忸怩たる思いもあります。でも、それはきっと、自分たちがやりたいことを曲げないでやってきたからこその遠回りだったので、悔いはないです。

―自分たちがやりたいこととして「面白さ」を追求。それは、なぜですか
簡単に言うと、人が面白がっている姿を見るのと、自分が面白がることっていうのは、身体的な快楽につながることなので。
僕は、人よりも、物事を窮屈に感じてしまう傾向がある。親のしつけや、学校・社会のルールなど、他の人はスルーできることを、敏感に抑圧と感じてしまう部分があって。過剰反応して、苦しくなった時に、唯一、救いになったのが笑いだったんです。テレビで見る芸人さんであったり、ギャグ漫画であったり。だから、それが原体験というか、面白さを追い求めてしまう部分はあると思いますね。

―30年で苦労したことはありますか
常に苦労の連続です。お金のない時代は総じて苦労しています。
でも、お金のないときでも、小劇場の窓から当日券を買いに並ぶお客さんの姿を見ると幸せでしたし。大きな舞台でも、こんなトラブル起きるのか、という苦労もしますし。
ただ、自分の好きなことをやって生きようと横車を押している訳ですから、苦労は常につきまとうものだと思っています。

―松尾さんの若い時代の過ごし方、そして今の若者へのメッセージを
僕が若い頃は、僕のような得体のしれない人間でも、世に打って出られるのじゃないかという空気感が、まだあったんですよね。小劇場の俳優がバラエティーや深夜番組に登用されていたりしてお金が行き渡っている印象があったし、僕のようなサブカル寄りの場所から出て行った人にも、居場所があった。今はそういう所を、芸人が占拠していますからね。なかなか入って行きづらいですけど。
そういう時代の空気の中で、自分の特色を出して割り込んでいきたいなという思いはあるんだけど、一方で、ものすごく人見知りなもので。人と関係性を築いていくのは難しいから、作品だけで勝負するしかない。結構、背水の陣みたいな思いで東京にいました。
ただ、多少は生きるためにやりましたが、他人に迎合したり、やりたくもない仕事をやったりはしない。自分が面白くないと思うことはやらない、たとえ振られたとしても、面白くしてやるぞという気概で生きてきた。そこは、自分の中でひとつだけ誇れるところかなと思っています。
今の若い人たちは、やっぱり状況的に厳しいところはあるとは思うんですけど、僕みたいな人見知りでも、なんとかこうやって、人前で話しているじゃないですか。だから、そういう意味では、やり方次第かなと思います。やり方は各々見つけていくしかないですけど。インターネットが入ってきてから、僕たちの生き様や表現のありさまも変わってきましたし。そこからは取り残されているような自分ですが、そこは若い人たちの方が分かっていると思うんで。

―阿部サダヲさんが「初めて褒められた」とコメントしている箇所があった。そんなに怒られていたのか。また、最近は共演もされていますが、その変化をどう思う?
それは阿部が勝手に頑張ったし、もともと才能があったということに尽きます。怒ったのなんて最初の方だけですよ。せいぜい、遅刻が多くて、あいさつしないとか、目を見て話さないとか、そんな社会人としてどうなんだみたいなことですよ。
ただ、人の舞台に立った時に、これまであまり人をほめるということをしてこなかったなと感じることがあって。それは、ちょっと反省しているんです。ほめてなくても、僕が演出席で笑っていたら、いいんだよってことなんですけどね。笑えるか、笑えないかをすごく重要視して生きてきたので、笑っていれば、それは「YOUがんばってるよ」ということですから。

―劇団員と共演する際の気持ちは
映画なんかでごくたまに一緒になると、なんか照れくさいです。演出を一緒にされることに、不思議な気分になりますね。

―これからの展望を教えてください
今年、自分でプロデュースした演劇をやるんですが、それは結構新しい取り組みですね。大人計画も大きくなり、商業演劇にも出ているので、万単位の人間を相手にした表現が増えてきて。ミニマルというか、シンプルな所に立ち戻った、演劇を始めた頃の衝動を思い返せるような芝居を作りたいなという思いが強くて。もちろん大きな舞台もやるんですが、今年からぼちぼちやっていこうかなと思っています。
あとは、初めて1人で監督、主演、脚本を担当した映画を制作しました。「108~海馬五郎の復讐と冒険~」というんですが、今年の秋公開。福岡でも上映するので、ぜひ見てほしいなと思います。

30祭(SANJUSSAI) 凱旋 大人計画大博覧会 in 福岡
松尾スズキさんと大人計画30年 年表のほか、大人計画 舞台写真、衣装、小道具、松尾スズキさんによるイラスト原画を展示。大人計画メンバーによる音声ガイド(有料)は必携です。
会期:4/21(日)まで開催中 10:00~20:00 ※4/16(火)は休館日
会場:イムズB2F イムズプラザ、8F 三菱地所アルティアム(中央区天神1-7-11)
料金:一般1000円、学生800円、高校生以下無料、再入場不可
問いあわせ:イムズ ℡092(733)2001(10:00~20:00)

▲アルティアムの展示風景 撮影:古賀亜矢子

▲イムズプラザ会場写真 撮影:古賀亜矢子

▲イムズプラザ会場写真 撮影:古賀亜矢子


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