常盤響さん「エロスについて」ロングインタビュー


シティリビング12月14日付の特集「のぞいてみたい ほんのりエロスな世界」で、「エロス」について尋ねた常盤響さん。

フォトグラファー、デザイナーとして輝かしい経歴を持ちながら、「ぼくはテクニカルなフォトグラファーではないから」と笑う気さくな人柄。数年前から福岡に移住し、現在は糸島市に在住。ブログマガジン「週刊ニューエロス」では常盤さんの日々のこと、カルチャーのことを発信していますが、その表紙となる女性の写真は、毎回とても魅力的すぎます。

紙面では入りきれなかったインタビューをたっぷりどうぞ。

 

――常盤響さんのブログマガジン「週刊ニューエロス」について

 

ぼくが東京で写真を撮っていたときは、タレントさんや女優さんが服を着てポスターや広告に使うものが多かったんです。いわゆる週刊誌、プレイボーイとか、ヤングなんちゃらの撮影もありましたけど、結構ファッションもグラビアもなんでも撮影していました。

福岡に来るときに、雑誌関係とかの仕事を、一切やめたんです。そしてCDのジャケットとか、知り合いからきた仕事くらいをやっていたんですけども、何にもなくなっちゃうのもなあと思って、いわゆる素人…ていうと今、どこまでが「素人」っていうのか僕もいまいち分からないのですが、出版社やプロダクションからの依頼ではなくて、個人からの依頼で撮っているのが「週刊ニューエロス」です。

僕は自分から「こういうポーズで」とか頼んだりは一切しないんです。それは一番違うことかも。というのも、タレントさんのグラビアって、タレントさんに今回この衣装でこういうイメージで、と進んでいくんですが、本人というよりプロダクションとか周りの意志で決まっていくんですよね。だから本人は、別にこんなんやりたくないかもしれないし。たとえば、「決意のヌード」とかよくありますけど、心の中には「朝ドラ決まってたらヌード撮らなくてもよかったのに」という思いがあるかもしれない。自分で脱ぎたいタレントさんなんてそういないと思っているんです。

だから、ぼくはそういうのにまったく興味がないんです。

今撮っているのは、その方が「やりたい」と言っていることで。最初はヌード撮りたいと言っていたけど、やっぱり迷うんだったらやめといてもいいんですよ、またその気になったらでいいんじゃないですか。無理することはないですよって言うんです。だから、基本的に「本人の欲望」なんです。

「ニューエロス」の撮影は仕事とは違うし、周りで見ている関係者もいない。ま、メルマガにしているのでそういう意味で見ている人もいるとは思いますけれども、僕はそのことでお金を払いも、もらいもしないんです。「ニューエロス」も、中身(テキストの部分)はエロでもなんでもなく僕の日記なんで、生活にはまったくエロスの要素がなくて、おじさん同士でキャッキャやってるってるのが分かってしまうというのがアレなんですけども。

 

――モデル募集をされていますが、一般の人からくるのですか?

 

きますよ。多いです。中には場所のことなどで結局撮れない人もいますが、できれば仕事でモデルなどをやっていない人を撮りたいと思っています。

たとえば女優さんはもちろん美人なんですよ。でもあんまり僕には違いが分かんないんですよね。だって整っているほうがいいのなら外国人のほうがいいじゃんとか、もうそれならマネキンとかCGでよくね?って。

今、顔をいじる方も多いし…自由にできますよね。盛って撮る写真の、あの状態を現実に作ってる。人工物が頂点ってことなのかなあ。でも、それを好きな男ってあんまり聞いたことがなくて。それに、そういう女性って男もいらなかったりするし、とにかく「理想的な自分」でありたい気持ちが強いんでしょうね。

僕は、もっと人間くさかったりするほうがいい。僕の撮影は、「こういうポーズとってみましょう」とかいうのは言わないんです。旧時代のエロスというか、男からぐいぐい言われるのがいい人もまだ多いとは思うんですが、僕は相手が言うことを「受け止める」「引かない」のが大事だと思っていますね。女の子が「自分がやりたいこと」をこれやりたい、あれやりたいっていう。何を言っても、引かない。それを受け止めて、やりたいことをやる、欲望をかなえていくうちに、それまで見えてなかった自分が出てくるんですね。

「能動的になる」。それは決して露出をすることというわけではなくて、好きなことをする。それは好きなものを食べるのでもよいし、何か趣味のものをするとか、好きなことと能動的に向かい合っているという人。あと、自分を肯定できているか。自分を愛しているか。

自分のことをちゃんと受け止めようと思っていたら、甘やかすだけではないと思うんですね。他人に見られてどうかよりも、自分が自分を見てどうありたいか。

ぽっちゃりしていて魅力的な人はたくさんいますよね。逆に美容をがんばって細いんだけど魅力的とは言えないかなという人もいるし。魅力って、数字では表現しづらいじゃないですか。3㎏やせるといかのほうがわかりやすいからメディアとかではそうなりがちだけど。

だれだってコンプレックスもありますよ。大概の美女は撮りましたけども、どんな美女だって半目で写る写真だってあるわけですし完璧じゃない。おなかとか二の腕とか、気になるところがあれば、そこを撮らなきゃいいんです。いいところを取ればいい。必ずしもすべてのウイークポイントをひけらかさなくていいんです。姿勢を良くするだけで見た目は何キロ分も変わって見えますし、それを見せると「あ、ほんとだ」って。それってだけで自信につながる。

 タレントさんがきれいなのは当たり前で、素材がいい人が、一流のヘアメイクをして、一流の照明や機材を使って撮影している。そこと自分を比べることはいらないんです。

 

――写真を撮っていて、「いい」と思うのは

 

僕の個人的な意見ですが、やっぱり「受け入れ観」「許され感」がある表情ですね。僕は撮影のときには広角のレンズを使うので、顔のアップを撮るときはズームではなくて、実際に近寄って撮影するんです。わざとやっているところもあるんですけれども。向こうが戸惑ったりして、最初は、えっ!てなるんだけど、しばらくやっていると…これは女の人しかならないんですけれども、急に「受け入れる」。「もうそこにいてもいい人」になれる。

他人の距離ってありますよね。家族の距離、恋人の距離って。それを僕は無理やり「恋人の距離」に侵入するんです。なぜかというと、もし3メートルくらい離れてズームで撮ると、「3メートル先を見てる顔」なんですよ。僕が撮るのは、ほんとに「15㎝前を見てる顔」。近くを見ていると右目と左目が内側に寄るんです。「3メートル先を見てる顔」の写真をじっと見ても目が合わないというか、視線が後ろに通り抜けていくのですが、「15㎝前を見ている顔」の写真は目が合う。親しみがわいて、身近に感じるので、見る人はぐっと来るんです。

 

――どうしてヌードを撮る?

 

女の人は急に受け入れる顔つきになって、1回その顔になると、横向いてもどんな顔しても、許している顔が撮れるんです。だから、そういった意味では、僕は撮影で、その女性の醍醐味というか、おすましの部分をいただいているので、いい思いをしていますね(笑)。

女の人は、ずるいなと思いますよ。その顔って、恋人とか家族への表情ではないんです。もう少し悪い感じがするんですよね。共有というか、共犯関係というか。なんか、変な言い方ですけども、女の人は浮気ができるんだろうなって。男の人は風俗とか、体の部分で遊ぶんでしょうけど、心は意外と不器用だったりする。でも女の人は、できるんだろうなあと思いますよね(笑)。

「どうしてヌードを撮るんですか」と聞かれたことがあります。僕もいい歳ですし、裸が見たいというのではもうないんですよね。自分の前で「裸になってもいい」と思ったときの顔が見たいんです、という話をしたことがあります。顔ってそれぞれ違いますし。その顔って一番誰もが見られる顔ではなくて、例えば火星の景色とか、少数民族の暮らしぶりとかと同じだと思っていて、自分をある意味で受け入れてくれた時の顔それはすごく神秘的でもあるし、どんなときでもあろうが、マックス魅力的、という顔なんですよね。

 

――常盤さんの切り取る「エロス」は、ほかと何か違います

 

 この特集の話で言うのは申し訳ないんですけど、僕、男子校出身なんで、変な意味でしょうもない猥談は好きなんですが、二十歳すぎても中学生レベルの話しかしないというか、他人の彼女の話は聞きたくないというか。

いわゆるグラビアの世界は男目線なんですが、篠山紀信さんとかと比べると、本当にもう次元が違うんですよね。あのくらいの方になると、長嶋茂雄だろうがアントニオ猪木だろうが、同じものがあるというか。そのジャンルの頂点の方々ってすごいじゃないですか。何歳になってもすごいバイタリティー。篠山さんなんて、夕方から夜中の2時3時まで飲んで、そろそろ…となったら「もう終わり?じゃあいつもの」と言ったら、ビフテキが出てきて、それが〆。ここからビフテキってすごいなって。しかも翌朝も9時から撮影って。歴史上の人物とか、その域ですよね。

そんなバイタリティーあふれた人たちに比べたら、僕なんか性に興味津々でもないし、タレントさんはきれいと思うですけど、縁の無い人なんで他山の石というか。だからそういう中で違和感があった。ただ、今撮っているのは相手が僕の撮ったものに興味を持ってくれたりしたもの。その欲望に対しては嘘がないんですよね。

それに、オトコの人には風俗店とかキャバクラとか刹那的に欲望を叶えるものがありますが、女の人って、なんか難しいじゃないですか。だから、ああやって解放されていくのは面白いなあっていうか。

 

――だれしも、エロスな気持ちは持っているもの?

 

 うん。エロスも欲望の一つなんですよね。性欲とか食欲とか。もとは同じ人間の欲望で。それが多い人、少ない人だと思うんです。タレントさんとか、本当に欲が強くないとできないわけで。いろんなリスクもあるのに、ありあまる名声欲とかお金の欲とか、とにかく持ってる「欲」が強いから、やってる。あんだけメディアで見つかっちゃうんだから、リスク考えたらしないでしょ!ということなのにやっちゃう。強さの違いはあっても、みんなそれぞれ欲望はあって、エロスに関しては、何かで閉じているのかもしれないですよね。

でも、そう思うと、エロが強くても特別なことではなくて、あって当たり前と思うけど、出せない時代だったり世代だったり。まあ、奥さんや彼女が急にセクシーな下着を着けてこられたらびっくりするので、あんまりアレなのも、ですけどね。

 


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