齊藤先生に聞く!【53】受精卵の染色体異常について<後編>


妊娠率が年齢とともに
低下する理由とは?

前回は、日本産科婦人科学会が行った特別臨床研究における、受精卵の染色体異常について紹介しました。体外受精の治療を何回も行っても妊娠しない人や習慣流産の人の胚盤胞の染色体異常率が高く、胚移植に用いることができる胚の率は研究対象者全体の3割を切る、という内容です。今回は、年齢別の胚盤胞染色体異常率について研究された論文についてお話ししたいと思います。

できる限り若いうちに妊娠・出産のプランを

この論文(Franasiak JM, et al: Fertil Steril 101, 656-663, 2014)は多くの症例を扱っているので、とても信頼性が高いデータだと考えています。この論文によると、異常な染色体を持つ胚盤胞率は年齢により異なり、一番低値を示す年齢は、26~30歳とされており、異常率は20%台とされています。この年齢よりも年齢が若くても高齢でも、異常率は上昇します。30歳前半では、約30%で、35歳以上になると異常率はどんどん上昇し、40歳では約60%、42歳では約75%、44歳では約90%に達します。一番低値の26~30歳で、胚盤胞期に達した胚でも、約20%の胚は異常胚であることには驚かされます(図1)。

この数値を前回お話しした日本産科婦人科学会が研究した結果と比較すると、異常率としては、やや低くなっていることがわかると思います。なぜ低いかというと、この研究では対象が体外受精を受けた全ての症例となっているためです。「何回も体外受精の治療に失敗した人」や「何回も流産した人」の症例ではないということが考えられます。

図2は正常な染色体数の胚を持たない人の割合を示した図です。1人あたり複数個の胚盤胞が育つことがあるので、検査後1個も正常胚がない人の割合は図1の数値よりも低くなります。この数値を年齢別に検討すると、1個も正常胚を持たない人の割合が最も低いのは26~37歳でした。その年齢よりも若い人、または38歳以上の人ではこの割合は増加しました。

26歳~37歳までは数%の人がこの検査を受けても胚移植に至りませんが、それ以上の年齢になると、検査をしても胚移植ができない人の割合が急増します。40歳では約13%の人が移植できませんが、43歳では約42%の人が検査を受けても胚移植できず、 45歳以上では約58%の人が移植できないことになります。

前回と今回のコラムは、難しい内容だったかと思います。やさしく説明すると、体外受精の治療では、この治療を受けた人全員が妊娠できるのではなく、その妊娠確率も年齢とともに低下します。その低下の大きな原因は、受精して胚盤胞に発育した胚の染色体が異常となる確率が高くなるからです。

私自身、この治療を目にするときに、治療がここまで進んできたことに驚きを隠せません。また、若い時期だったらこのような治療のお世話にならなくてもほぼ妊娠・出産できることを考えると、いつかお子さんを持ちたいと考えている人であれば、できる限り若い時期に妊娠・出産のプランをライフプランに入れることが大切だと感じています。自分のキャリアとの兼ね合いもありますが、いろいろな情報、知識を得てライフプランを考えてみてください。

PROFILE齊藤英和先生

1953年東京生まれ。国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター不妊治療科。日本産科婦人科学会・倫理委員会・登録調査小委員会委員長。専門分野は生殖医学、特に不妊症学、生殖内分泌学。内閣府「新たな少子化対策大綱策定のための検討会」委員


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