齊藤先生に聞く!【52】受精卵の染色体異常について<前編>


体外受精を受ければ
誰でも妊娠すると思っていませんか?

こんにちは。産婦人科医の齊藤英和です。最近、ある週刊誌に、日本産科婦人科学会が行った臨床研究の結果についての記事が掲載されていたので、今回はそのお話をしましょう。

子宮に移植してもよい胚の率は約27%

記事の内容は、体外受精などの生殖補助医療でできる胚(受精卵)の染色体を調べると異常の率が非常に高く、子宮に移植した後に正常に着床(子宮内壁に受精卵が付着し、発育を開始すること)・発育する胚の率は、臨床研究の患者の検査した胚のうち約27%であり、多くの胚移植は移植しても着床しなかったり、着床しても途中で発育を停止し流産になる胚を移植しているといったものでした。

このようなことは以前から、体外受精を行っている医師や患者には知られている事実であり、胚移植してもなかなか妊娠しない理由の第一候補に挙げられている原因でした。ただ、中には、体外受精を受ければすべての人が妊娠すると思っていたり、胚を移植した人は全員が妊娠すると信じている人が多いことも事実です。そのため、このような情報が新しく発見されたことのように報道されると、驚きをもってその記事を読む人もいると思います。

胚の染色体の状態を調べる検査(PGT-Aといいます)をした胚は、正常胚と異常胚に分かれるのですが、胚移植可能かどうかに関して、◯か×かはっきり分かれるのではなく、どちらとも判断がつかない胚というのも出てきます。私たちの中には、正常に何の問題もなく生活している人でも、いろいろな染色体の変化を持っている人も結構います。ですので、ある胚の染色体が少し変化しても、外見上は正常に生まれ、何の問題もなく発育できる胚なのかもしれません。

また、この検査では胚の細胞のうち、将来胎盤に分化する細胞の一部の細胞を採取して調べるのですが、この細胞と将来胎児になる部分の細胞の染色体が異なる場合もあります。ですので、この検査を受ける際には、検査に関わる利点ばかりでなく、欠点についても事前によく説明を受けないといけません。場合によっては、検査結果が出てからいろいろ悩み、かえってこの検査を受けなければよかったと思う人が出てくる可能性もあります。

今回の日本産科婦人科学会の臨床研究結果では、検査した胚の約27%しか子宮に移植してもよい胚がなかったのですが、この数値は以前の外国の研究と比較すると、41歳ぐらいの患者の胚の染色体の正常率と同じです。今回、日本産科婦人科学会が行った臨床研究の患者の年齢はもっと若い人が多かったのですが、なぜ年齢の割に正常胚率が低かったのかというと、今回の研究の対象となった患者が、何回も流産を繰り返している人と体外受精の治療を何回もして妊娠に至らなかった人が対象となっていたためです。このような患者は、若くても正常胚の率が低いことがわかりました。

正常胚の率は、年齢が若いほど高いと言われています。次回は、外国の研究報告も交えて、これらのことについていろいろお話したいと思います。

PROFILE齊藤英和先生

1953年東京生まれ。国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター不妊治療科。日本産科婦人科学会・倫理委員会・登録調査小委員会委員長。専門分野は生殖医学、特に不妊症学、生殖内分泌学。内閣府「新たな少子化対策大綱策定のための検討会」委員


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